新米工場長、新工場を立ち上げる。

2019年12月15日日曜日

t f B! P L

全てが不安定 次々に問題発生する日々がはじまった。 


全くの、ど素人工場長、肩書だけといっても過言ではない工場長ということもありましたが、新しい工場は、とにかくすべてが新しいものでスタートしていました。 

建屋、設備、人、全てが新しく、全てが不安定そんな環境でした。 

特に、設備と人、これが不安定だとそれはもう大変です。 

はっきり言って、まともなものが製造できない。 

その後、この経験があって自分なりの設備導入の対応方法が身についたということもありますが、この時はそんなことは思いもよらないほど、悲惨な状況でした。 

すでに悲惨な悪循環がはじまっていたのも気づかず、目の前に起こる出来事に必死で対応する日々となっていました。

 悲惨な悪循環とは、このような感じです。 

設備&人が不慣れ=クレームが発生する→保留が発生し、在庫がなくなる→じっくり設備調整する時間なく、製造しながらのチョコ調整→残業時間が増える→人が辞めていく→また新しい人に教えながら製造してもらう→クレームが発生する→クレーム対応に追われ、じっくり教育できない、立ち会えない→クレームが発生する。。。 

もう、何やってるんだ?という悪循環です。 

とにかく、設備がまだ整備しきれていないままスタートしたために、思うように生産性が上がりません。 

まず、供給責任がありますが、これすら最初は満たすことができなかったのです。 

とにかく酷かった。

 旧設備の1.5倍の能力を備えた設備の導入でしたが、スタートした時、旧設備の50%も発揮できませんでした。 

明日納入に必要な数量が、出来上がったのが、朝の5時。。。そんなスタートでした。

 設備メーカーの整備員の方も付っきりで調整してもらいながらの製造が続きます。 

しかも、人も新人ばかりです。 

教育しながら、手探りで、不安定な設備で製造し続けるのです。 

それは、不良品が流出するはずです。

 すると、クレームになります。 

綱渡りのような状態で供給しているのに、クレームが発生するのですから、ロットアウトになんかなってしまうと、たちまち欠品するのです。 

クレームの連絡が入ると、すぐにお客様の工場に向かいます。 

とにかく、早くしないと本当に欠品になるのです。

 一刻の猶予もない。。。 

この時には、もうロットであるとか、トレイサビリティも学んでいて、いかにロット管理が重要かも理解はできていましたので、まず問題が広範囲でないことを願うばかりです。 

現物を確認し、発生状況を確認し、すぐ戻って調査を行います。 

該当するロット№から、何が原因なのか製造日報から調査します。

 もう、必死です。 

とにかく、この時の私は、欠品=会社の存亡の危機という思いでいっぱいでした。 

自社にとって一番重要な顧客、売上も7割を占めていました。 

このお客様に見限られたら、終わり。。。 

そんな危機感を背負い、責任を背負い、不安定な設備と不慣れな新人作業者たちと物づくりをする日々だったのです。

 事務所は、私と事務員の2名のみでした。 

ですから、生産計画も資材手配も、納期回答も、来客対応も、取引先への連絡対応も何から何まで私がしなければなりませんでした。 

クレームが発生したときや、原材料に異常が発生したときはもう悲惨です。

 問題解決するまで、製造日報からデータをまとめたり、営業倉庫まで出向き仕分けをしたり、もう昼間はそんなバタバタばかりです。 

製造が終わってから、事務所1人で残り、庶務を行う日々です。 クレームが発生したり、大きな社内でのトラブルが発生すると、その責任の重さに耐えきれず、人員がどんどん去っていきます。

 続かないのです。 そうすると、派遣会社に相談したり、面接もしなければならないし、また時間がとられます。

 そのような過酷な日々でした。 

休日は、平日に見つかった設備の不備の調整にあてていましたので、最初の頃は、休みもろくにない日々でした。 

でも不思議と、この当時の私の心の中には、会社を辞めるという思いは全くなかったのです。 

こんな悲惨な状況でしたが、ここで私の特徴であるまじめさが、とにかく背中を後押ししてくれていました。 

会社をつぶすわけにはいかない、これ以上お客様に迷惑をかけるわけにはいかない。 

とにかく、それだけのために生きていたのです。 

そう...それだけのために生きていたのです。 

ひどかった時期の私の1日のスケジュールが下記です。 



 今思うと、良く生きてこれたなと思います。 

家にはほとんど、風呂と食事と短い睡眠のために帰るだけです。 

昼の食事から、家に帰ってから夜中に食べるまで、何も食べることもなく、仕事をしている状態でした。 

家に帰るまでの車の中で、何度もあっ?このままでは、脳の血管が切れそう。。。という状況が何度もありました。

 その時は、車の窓を開けて、冷風を浴びるのです。 

すると意識が保たれるというか、とにかく生きて帰らなければという強い想いが復活するのです。

 いつも妻が、私が帰るまで食べずに待っててくれたからです。 

実はこの新しい工場というのは、もともとの会社からは他府県となり、妻も友達もいない土地に一緒についてきてくれていました。

 だれも話相手もいない。

 夫は、朝早くから、深夜遅くまで帰ってこない。 

かなりツラい思いをさせてしまったと思います。 

毎日、見知らぬ土地で独りぼっち、夫はやつれた状態で帰ってきて、食べて風呂入って寝て、またすぐに会社に向かう。

 しかも、この時、実は新婚だったのです。 

結婚して3か月後に転勤というか新工場立ち上げでこの地にきたのです。 

そして、そのあと、妻に異変がおきてしまいました。 

次回は、そのエピソードをお伝えします。 

今日のポイント
●設備が不安定なまま導入してはいけない。
●人の熟練度合というものは、重要な品質要素である。




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